ロシア大使が殺害された事件に関して報道各社はテロリズムであると非難している。冷戦が終わり何十年たっても収まらない中東情勢は、中東の人間が起こした犯罪だからテロであると画一化するまでになってしまったのであろうか。
9・11、イラク戦争、そして現在のシリアの内戦。ロシア・中国が支持するアサド政権に対し反政府軍を支持する欧米諸国と構造的に東西冷戦そのままにも見える。緊張状態が続くシリアの都市アレッポではアサド政権による反体制派への爆撃がいまなお続いている。
地獄と化したアレッポの様子がよく書かれている。たるにつめた爆弾を頭上から投下して無差別に攻撃して爆散させる。さらに30分後、爆弾によって負傷した人を治療するために集まったところを見計らって爆弾を投下する。想像するだに恐ろしい惨状がアレッポにはある
Would women of Aleppo choose death over rape?
さらにこの記事ではアレッポで起きているアサド政権軍による強姦被害について書かれている。イスラム圏において女性が肌を露出すること自体がほとんどなく、貞操観念も日本の常識が通用しないほど強固なもので強姦された時の精神的被害は甚大なものに違いない。
そしてアレッポの女性は政府軍またはISISによって捕まり強姦されるぐらいなら死んだほうがましと考える人がいる。
父親に「強姦される前に殺してほしい」と頼む人がいると記事内に書かれている。実の娘をその手で殺さなければいけないほどの地獄が他にあるのであろうか・・・
こちらは爆撃にあいにげまどう人々を映した映像。日本から見るとすさまじい光景である。
This is an example of what is happening in Aleppo and Syria. Please, pray for the Syrians and for peace in the world. pic.twitter.com/dp7hOg692V
— Muhammad Al-Yaqoubi (@Shaykhabulhuda) 2016年12月14日
中東情勢は歴史を見て冷静聡明に慎重に語らなければいけない経緯がたぶんに含まれていてこれほどセンシティブな話題はない。そんななかでもおよそ無知な人間ができる唯一可能な姿勢は同情だと僕は思っている。
ロシアはアサド政権との関係がありアメリカはイスラエルとの関係があり引けない。さらにアメリカはロシアとの関係もあり強硬手段に出るわけにはいかない。そうして長期戦と化したシリア内戦は膠着状態と化し無意味なまでに人を殺しまくる戦場と化している。
そうして地獄と化したアレッポで生まれた憎しみがロシア大使をトルコで刺した。
イスラム過激派のようにおよそ理解不能な教義に生きる人間の正義はテロリズムと呼ばれるべきであり断固として許されるものではない。他者との隔絶を飲み込めない原理主義者は閉ざされた集落でのみ生きることをすすめる。しかしアレッポの戦闘に巻き込まれた人間の憎しみは教義や信条とは関係ない。
まったく理不尽な爆撃によって生活が破壊された状況は異国の地で暮らす自分でも痛ましく思いを馳せることができる。一被害者からすれば宗教の教義、経済的な理由、外交関係がなんだろうと関係ないのであろう。自らのあずかり知らぬところで理由づけされたところで降ってくるのは結局爆弾である。そんな内戦によって生活基盤を奪われた人間の憎しみはテロリズムではなく復讐と呼ぶべきだろう。
テロリズムは狂った思想や過剰な正義によって引き起こされるもので代表的なものが自爆テロで命を超える価値観を手に入れた人間の暴走によって引き起こされる。
命を捨てるまでにその信条に生き死んでいく人間は時に英雄として扱われる、日本の武士道でも切腹として描かれていたりするがそろそろはっきりと命を捨てるほどに肥大した思想はクソであると言い切るべきである。
テロリズムと復讐は違う。無差別に殺しても復讐で大使を殺してもどちらも等しく殺人であり言葉遊びのような「違う」という言葉にどれほどの意味があるのかわからないが・・・
(仮に彼が過激派ではないとしたら)故郷を奪われた人間の復讐をテロリズムと呼ぶことは殺人犯であれ故人にたいして礼を逸しているのではないかと思うのだ。