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恐山~死者のいる場所~
けっこう前に出版されていた恐山院代をつとめる南さんの本。
恐山で人は何を見るのか、何を探すのか、死者を探す生者、死者が「在る」場所。
中盤あたりに出てくる恐山に訪問して南さんと対話することになった50代の女性の話が最も印象深かった。というか読んでて泣いた。
大黒柱だった父によって教育されてきた娘。強かった父。父に従った人生。認知症になって弱って亡くなった父。どうしてよいかわからなくなる娘。父を探しに恐山へ。
「つまり今日あなたかお父さんを探しにきたのですか?・・・」
泣き崩れる女性。50年分の涙。情景がくっきりと浮かんでくるようなそんな感じがした。
他にも南さんならではの仏教的な世界観。資本と生の構造なども書かれている。
しかも文章がめちゃくちゃうまいので一日で読めてしまう。正月休みなどで実家に帰ったあとなど読むと響くものがあると思う。
オリガ・モリソヴナの反語法
いつだったか京大書店員さんの記事がはてブにあがってきて絶賛されてたので買って読んでみたら信じられないぐらい良かった。
なんというか感想が思いつかない。言葉にしにくい。これぞ小説、というと陳腐に響きますが個人の人生をここまで描き切るかという感動がある。
中動態の世界
能動態、受動態だけの世界は言語から来ていてそれが諸々の問題になるのが主題(と僕は読んだ)。中動態のなさは本の中でハイデガーが書いていたことにも通じると書かれている。ハイデガーがあえて難解な言い回しを使い何を言いたかったのか。言外の言語化。
「放下」で何を言おうとしたのかわかりやすく書かれている。自分もハイデガーの本は読んだことはあるのですけどほとんど理解できなかった。けど國分さんの本はけっこうわかりやすい。
それでも僕はおそらく中動態の世界の半分も理解できていない。そしてハイデガーの本に至っては理解できる部分が2割程度。
能動態でもなく受動態でもなく中動態。そこになんというか境地みたいなものが存在するのかは、自分にはよくわからない。再読必須。
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
- メディア: 単行本
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ゲンロン0~観光客の哲学~
東浩紀さんの渾身の一作。
哲学書という枠組みではあるのだろうけど読んでいると自己啓発のような感覚を覚える。通常の自己啓発は本によってなにかを与えられる感覚があるがゲンロン0は自発性そのものに食い込んでくるようなそんな本だった。観光客的生き方が新しい近代の生き方として描かれているけれど、自分は観光客に「立ち戻る」ような印象を受けた。それぐらい普遍的でなんというか心に根差すものがある、ゆえに思想書としてはめずらしく感動を覚えた。
観光客(という希望)の哲学。
内容としてはヘーゲル、フロイト、ドストエフスキーなどを引用しながらそれらをアップデートしていく形になっている。内容は哲学であるがかなり読みやすく書かれている。読者が論理の前提を忘れそうになるところで反芻してくれているので再読したりページを戻らなくても理解できる。
響~小説家になる方法~
一人の女子高生小説家、響のお話。純文学を書き純文学的に生きる小説家という設定なのだが設定自体はうーんといった感じ。作中では響が日常生活の中で純文学的に我を通していく場面が多々ある。恐れがない人間のかっこよさはヒーローものに近い。
小説家になる方法というよりもロックンロールだなこれは。ピストルズとかRATMとかが似てる。
ロックな格闘漫画。天才インフレヒーロー女子。
小説の話というより日常の中で我を通していく響がただただ痛快。 面白い。
政治的なものの概念
やまもといちろうが駆使している友敵理論について - メロンダウト
自分のブログより抜粋
それぞれに敵を設定し批判することによって友があつまり権力が生まれます。非モテはどこかで(モテるようになると友が裏切られたと感じるかもしれないから)モテるようになりたくない気持ちを持ちます。意識低い系は意識高く生きるのが恥ずかしいなんてことを思う。シュミットの理論でいえば友敵を区別しその闘争にアイデンティティーを見出し権力を意識する点では人々はすべからく「政治的なる」と言うことができます。
正直読み切れていない部分がある。 難しい。難しいが興味深い。
上記ゲンロン0の中にもカール・シュミットは引用されています。独裁者はいかに理論的、哲学的支柱を得うるのか。そして独裁者は悪なのか。そんな「そもそも」の概念について。そして友敵理論が近代にも直結する前提として存在すること。
政治哲学では必読の古典。再読します。
夜と霧
たしかusausamodeさんがおすすめしてた本。
ナチスの大量虐殺の実態が克明に描かれている。巻末には実際に死体になり遺棄焼却される人々の写真も載っている。
読んでいて戦慄しかなかった。あり得ない方法で人体実験される人。衰弱した人間の目がいかに絶望的な闇を語るか。地獄だとしかいいようがない。人間は残虐である。これは100年も前の話ではない。人間は残虐になる。
ナチスドイツの医療が先駆的だという人がいたりするが夜と霧を読んで医療実験にさらされた人の非人道性を知ってから言ってほしい。こんな医療なら僕は、いらない。
- 作者: V.E.フランクル,霜山徳爾
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1985/01/23
- メディア: 単行本
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了
良いお年を(*^▽^*)
お酒飲むぜ。飲むぜ飲むぜ飲むぜ。