はてなブログで歌詞を載せられるようになったので以前書いた記事を再掲載します。
hideが生前に残したピンクスパイダーという曲がある
hideは当時のインタビューでピンクを妄想、スパイダーをウェブサイトのウェブと述べていて
実は色んな要素が、すげえ一杯入っててタイトルからしていくつもの要素からできててピンクっていう色は妄想の象徴。スパイダーは蜘蛛自体よりも”蜘蛛の糸”っていうのにこだわりがあったんですよ。蜘蛛の糸って英語でwebって言う。情報を張り巡らせるっていう意味。web siteのwebなのね
http://sound.jp/hide-psyte/pink-spider-page.html
さらにCD全盛期、インターネット黎明期のあの時代ににすでに現在のようにインターネットで音楽を聞くようになると話していたという
そんな思惑が詰め込まれたピンクスパイダーの歌詞
音楽の歌詞というのは一般化されて誰もが共感しやすいように作られている。ピンクスパイダーの歌詞に関しては比喩な表現を多用して解釈を持たせているように見える。空、雲、翼、鳥など具体的なものでも別のなにかを想像して記号化されたものが非常に多いので人によって捉え方が違ったりする。
多少なり恣意的になってしまう恐れがあるのだがあえて歌詞全文についてインターネットというキーワードを想定しながら解釈してみることにする
歌詞はピンクにしました
君は嘘の糸張り巡らし 小さな世界 全てだと思っていた
嘘だらけのインターネットの世界から見える世間の価値観を全てだと思い取り込まれていく様
近づくものは なんでも傷つけて 君は 空が四角いと思ってた
自分が信じている物が脅かされることを異常に嫌うことを「近づくものはなんでも傷つけて」と表している。ネット社会における確証バイアス、見たいものしか見ないで先鋭化する状態を言い当てている。
嘘で固められた価値観で世界を見ていたら心の柔軟性を欠くようになってしまったことを「四角い空」と表現している
「これが全て…どうせこんなもんだろ?」君は言った… それも嘘さ…
仮想空間から現実を「全て」分析している気になって世界を諦めている、けれどそれも嘘だと本当は気づいている
ケバケバしい 君の模様が寂しそうで 極楽鳥が 珍しく話しかけた
凝り固まって傍目にはうるさい心持ちのことを「ケバケバしい」と表現しそれはとても寂しいものだよと説いている
極楽鳥の意味はそんなケバケバしい心持ちでも時にはすがすがしい瞬間もあるということと読める
「蝶の羽根いただいて こっち来いよ」「向こうでは 思い通りさ」
インターネットという仮想空間の良い部分=「蝶の羽根」と表現していて向こうという現実に誘っているようにも読めるし単純にどこか別の場所とも読める
ピンク スパイダー 「行きたいなぁ」
ピンク スパイダー 「翼が欲しい…」
虚構世界に生きる人が現実世界への憧れを呟いているようにも見える
具体的に言えばリア充への嫉妬のようなものだろう
デートもしたいし結婚もしたいし友人とも遊びたいことを一言で「行きたい」と言いそれでも躊躇してしまう自分の重さを嘆き「翼が欲しい」と表現している
両方とも括弧つきで呟いているだけなのが現在、twitterでつぶやいている人と酷似する
捕えた蝶の 命乞い聞かず 君は空を睨む
インターネットで他者を攻撃して炎上させる心理状態そのもの
どこかで馬鹿をやって炎上している他人が「捕えた蝶」、「命乞い聞かず」は相手の謝罪に聞く耳を持たないことを表し、「空を睨む」は世間への態度ということだろう
そして
「傷つけたのは 憎いからじゃない 僕には羽根が無く あの空が 高すぎたから…」
炎上させる、「傷つけた」のは相手が「憎いからじゃなく」妬み、つらみが原因であり自分の能力のなさを「羽根がない」と呪い社会と自分のバランスが取れないことを「空が高すぎる」と表現している
(セリフ)「私の翼を使うがいいわ,スパイダー。飛び続けるつらさを知らないあなたも,いつか気付く事でしょう。自分が誰かの手の中でしか飛んでいなかった事に。そして,それを自由なんて呼んでいた事にも…。」
プラットフォーマーが提供するサービス内で匿名性を利用し傍若無人にふるまうことを自由と呼んでいる滑稽さを主張している。
借り物の翼では うまく飛べず まっさかさま 墜落してゆく
どっかから借りてきた価値観ややり方ではうまくいかないどころかウェブという仮想空間を相手にしているかぎり「墜落してゆく」と説いている
ピンク スパイダー 「もうダメだ」
ピンク スパイダー 「空は見えるのに…」
ピンク スパイダー 「失敗だぁ」
ピンク スパイダー 「翼が欲しい…」
ウェブにおける仮想人格「ピンクスパイダー」の絶望が最高潮に達して嘆いている
わずかに見えた あの空の向こう 鳥達は南へ
空とは現実。鳥達は本当に自由に生きている人達を表している。彼らは暖かい南に飛んでいくのを地上(ウェブ)からみている様を表している
「もう一度飛ぼう この糸切り裂き自らのジェットで あの雲が 通り過ぎたら…」
ピンク スパイダー 空は呼んでいるピンク スパイダー ピンク スパイダー
我に返り自分の足を「自らのジェット」と表しhideの一つ前のシングルであるROCKET DIVEを連想させる、そして邪魔な雲、ここでは自らの枷になっている上述したようなウェブ的価値観が消えたら歩き出そうと呟いている
ROCKET DIVEとピンクスパイダーとever freeは3部作で人生を表していて
ROCKET DIVEを若いころの勢い
ピンクスパイダーを挫折や失敗
ever freeをいくつになっても自由でチャレンジしてよいことを歌っている
桃色のくもが 空を流れる…
冒頭に書いたように桃色(ピンク)は妄想を意味していて空=「現実」を見ようとしているのに雲(ウェブ的価値観)が邪魔だなと嘆いている。
バッドエンドで曲は終わってしまう
もうhideが亡くなってから21年たつ。ピンクスパイダーが発売されたのはそれ以前だから今みたいなインターネット環境はもちろんない。
もちろんhideが意味していたピンクスパイダーは僕が解釈するところとは違うのかもしれない。絶望の淵にいる人から見る世界とかもっと普遍的なことを歌っているのだと見ることもできる。
しかしここまで的確に今起きているインターネットの弊害を言い当てているのはものすごい。当時なんかまだ携帯電話の普及率もそれほど高くなくてネットに繋いでいる人はごく一部だった。
そんな時代でここまでの先見の明を持っていたのは天才という他ない。
20年以上経つけれど亡くなってしまったことが本当に残念だ。今を生きていたらどんな曲をつくっていたのだろうかと思う。
ピンクスパイダーは絶望を歌っているけれどever freeが続きになっていてそこでは希望を歌っているのでそういう風に聞くとすこしまた違ったhideに出会えるかもしれない。