メロンダウト

メロンについて考えるよ

鬼滅の刃について

僕は好きだよ、鬼滅の刃

まだ映画は見てないけど

anond.hatelabo.jp

 

 

ただ今流行ってる面白さと原作の面白さは微妙にずれてきてるような気がする。僕が原作で好きだったのは漫画のテンポの良さとストーリーが間延びしない軽快さだった。長編漫画はそれはそれでいいんだけど今流行ってる漫画ってワンピースやキングダムを筆頭にどれもストーリーが伸びに伸びてて週刊連載で見るとまったく話しが進んでない回もあるけど鬼滅にはそれがないのがよかった。テンポよく読めて来週の話がちゃんと楽しみのまま一週間過ごせる。

原作を読んでた時には安心して読める漫画だと思ってた。ジャンプ主人公らしい炭治郎の考え方は昔からのジャンプ読者としては簡単になぞれて安心するし、ちょっと間の抜けてるところとかも軽妙でなにより「妹を人間に戻す」っていう目的がはっきりしててどこから読んでも話を追える安心する漫画だった。鬼の首が切れて絵的にはちょっとグロっぽいところもあるんだけど漫画の構成としてはとても安心して読めるってのが今も変わらない原作の印象だけど

アニメを見たらものすごいことになっててびっくりした。なによりもアニメーションがすごかった。ヒノカミ神楽を使うシーンなんかもはや芸術作品みたいになってて躍動感と流麗さに圧倒されたし、それでいてコメディーシーンではかなり柔らかい印象で描かれててその対比というかギャップもあいまってアニメの力ってすごいなあと改めて思った。その一方で原作ではそこまで気にならなかったグロシーンが克明すぎてすこし恐怖を覚えた。

 

もともとテンポの良い漫画で物語の構成も素晴らしいものをこれだけ鮮明にアニメにしたらそりゃ売れるしこれだけ流行りもするよなと納得で実際に自分も好きなんだけど増田の言うこともなんとなくわかる。

 

悟空とかみたいな「ただ強くなりたい」的キャラって大体敵として扱われがちなんだよね、この作品。なんつーか、自己犠牲精神がないと許されない世界というか。

ちょっと怖い。狂気感じる。

あと「長男だから」はギャグっぽくも使われてるし、自分を鼓舞する言葉としては有効だけど、これに類する言葉に苦しめられてきた人はたくさんいると思う。

まあでも、今はそういうのが求められているのかもしれない。

 

自分はそこまで深読みしないで漫画を読むので読んでた時には炭治郎の自己犠牲についてそこまで気にならなかったものの確かにそうだなと思うところがある。自己犠牲というよりも炭治郎の白無垢さには気色悪いものが確かにあると思う。どれだけの悲劇や残酷な現実にぶちあたろうともなにひとつ歪まないのはとても人間とは思えない。いっさいの歪さがない空のように広い心を持つ少年だけど理想的な人間すぎて感情移入するにはすこし難しい。できればもっと暗黒な面も見せてほしかったとも思うけれど少年漫画なのでそうはいかないのでしょう。

 

キャラクターについてはジャンプという雑誌で連載するにはそれなりの制限というか読者層の違いみたいなところがあるのでしょうがないと思うけれどひとつだけ読んでいた時に気になっていたことがあって

バックストーリーが必ず家族との物語になっている点がすこし気になっていた。鬼滅の刃は主要キャラクターほとんどに回想シーンがあるのだけどどれを見ても家族との関係が描かれている。炭治郎をはじめいのすけの母親やぜんいつのおじいちゃんにアカザの育ての親とその娘だったりほとんど全部じゃないかな。必ず家族との関係が過去にあってそこを起点に人物の動機だったりが語られる。なので途中からん?と思うようになり、黒死牟やアカザのあたりで「またか」となってしまったのが正直なところだった。しかしどの回想シーンも読んでみればテンプレというわけでもなくそれぞれに個性的な動機があって結局は面白かった。

というわけで作品としては大変に面白いと個人的には思ったのだけれど鬼滅が流行っている現象そのものについてはなにかすこしの諦めというか思うところがある。

 

鬼滅の刃の主人公こと炭治郎は上にも書いたように無垢な心を持ちながら努力をおこたらず目的へと向かって邁進していく理想的な少年誌のキャラクターなわけだけど

20年前にも流行っていた友情・努力・勝利をかかげたキャラクターが今も流行っているのを見るとなにかなにも変わっていないんだなと・・・

フィクションが描くキャラクターにたいしてどうこう言うつもりはまったくないけれどフィクションで好まれているキャラクターは現実にも好まれうるキャラクターだと言える。それがここまで変わらないんだなというのにはすこしの絶望みたいなものは感じる。鬼滅の刃が流行るのは作品の面白さから当然と言えば当然だと思うけれど鬼滅の刃のようなヒーロー漫画が流行る現象を見ていると読者や視聴が求めているものも昔とそう変わっていないんだなという思いが強くなる。

 

20年来ジャンプを読んでる自分が言えたことではないけれど。