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ファスト映画の賠償金5億円について

Youtubeに通称ファスト映画という映画の要約動画を投稿していた件で民事裁判の判決が出た。その賠償金額が5億円というニュース

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刑事では執行猶予付きの有罪判決が既に出ていて先日、民事で賠償金の判決が出たみたい。内訳としては1再生あたり200円換算で総再生数を乗じた推定被害額が20億円、そのうち5億円を被告に請求となっている。当該被告が動画投稿であげていた収益は約700万円と言われているけど、応報刑としては行き過ぎているような気もする。

たしか不法行為にもとづく損害賠償金は非免責債権になる可能性があり自己破産しても債務が消えるわけではないと、記憶の片隅にある。扱いとしては養育費と同じだったような・・・

5億円の債務かつ刑事で有罪判決が出たことにより社会的信用も失ったことを考えると量刑として重すぎるような気もしてくる。

当然、著作権侵害が駄目なのはその通りなのだが、昨今の勧善懲悪的な風潮が増長したせいか刑罰の多寡について議論されることはなく有罪か無罪かという話に終始してしまうのはどうなんだろうと思ってしまう。ファスト映画を投稿したことで事実上人生終了となるのは本当に適切な判決なのだろうか・・・

 

ファスト映画のような切り抜き動画は他にも多く出回っていて、たとえば漫画のコマを列挙して解説する動画もYoutubeには数多く存在している。様態としてはファスト映画とほとんど同じものが数多くあり、紹介というていを取りながら事実上のネタバレになっている。おそらくそうした動画を投稿している投稿者本人も好きなものを紹介するといったカジュアルな感覚でやっているのだろうけれど、それがまかり間違って人生終了になるのはやはり怖いことであるように思える。

また、ファスト映画のようにそれを見たことでコンテンツを購入する動機を失うという観点から見れば、ゲーム実況なども同様の判決が出る可能性がある。大手の実況者は配信可能かは確認していると思うけれど、例えば海外産のマイナーゲームを他意なく紹介実況していたら再生数とゲームの販売金額を勘案し算出された損害賠償を請求されるということにもなりかねない。そうした過誤による著作権侵害にたいし厳罰を貸すのは本当に妥当なのだろうかと個人的には思ってしまった。

いずれにせよ投稿者の意図や過誤を考慮せずにコンテンツの逸失利益をそのまま損害賠償金として請求する今回の判決には疑問が残る。

 

ファスト映画は自分も見たことがあるけれど紹介という意図は確かにあったように記憶している。それはゲーム実況者がゲームを紹介するのと心性としては似たようなものだったのではないだろうか。

僕が見たファスト映画は映画を切り抜いて編集し、そこに女性の声をあて場面ごとに解説するといった形式をとっていたけれど、あれだけ編集するのは相当時間をかけていただろうし編集の仕方にもユーモアが散りばれられていたりして、確かに著作権侵害ではあるのだが「好きが高じて」のような雰囲気を見て取ることができた。他にもファスト映画は数多く存在していた時だったので著作権にたいする意識もあまりなかったのではないかと思える。

僕が見たのは『エスター』というホラー映画を要約したものだけど、その動画を見て興味を持ち映画本編をサブスク視聴したりもした。ネタバレとして著作権を侵害するのと同時に映画を購入する動機にもなっていたのだろう。もちろん、だからと言って著作権侵害が許されるわけではないのだが・・・

 

なんにせよかなり多方面に飛び火する判決に見えるが、著作権にたいする意識を啓蒙するのと同時に、インターネットにひしめく「コンテンツの中継地点」をどう考えるのかは議論されても良いように思う。すくなくとも厳罰に処せば良いという単純な話ではないはずだ。そのうち行き過ぎた厳罰にもキャンセルカルチャー批判のような形で疑問符が出てくるのではないだろうかと、そんなふうに思うニュースだった。