メロンダウト

メロンについて考えるよ

結婚制度解体を主張する人は近代に毒されているのでは

結婚制度をなくすということは恋愛を自然状態に帰すということだけどそうなった時の社会不安についてはどう考えてるのだろう

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自由主義的恋愛の最大の欠陥はアルファ雄が大勢の雌と番になるため、雄同士で殺し合いになるということで、たとえば自由主義によってパートナーを得ることができなくなった未婚男性(いわゆるインセル)がテロを起こすなどの問題はすでに顕在化している。

カナダで「童貞テロ」を初訴追──過激化した非モテ男の「インセル」思想とは|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 

現代が自由恋愛の時代とはいえ、今のところは一夫一婦制という建前上の倫理とそれに基づく法制度によって完全な自由恋愛にはなっていないけれど、恋愛を自然状態に返していき倫理的建前を排除していくと最終的に男性はアルファかインセルかに二分され社会不安が尋常ではないものになる。実際、中国の後宮であったり部族の長が女性を独占したりといった事例は歴史的にも数多くある。そしてそのような不平等に永続性があるわけもなく、闘争になることがしばしばあった。人間も所詮動物なので雌を取られた雄が殺し合いになるというのは人間社会ではしばしば見られる。現代でも同様で、インセルや無敵の人など社会関係から見放された個人が起こす事件は後を絶たない。

けれどそれは今のところは個別発生的な「事件」に留まっている。インセルによるテロ行為も暴走した個人による犯罪という側面が強いが、テロを起こさないインセル潜在的には数多く、彼らがテロを起こさないのは一夫一婦制という建前がブレーキになっているに過ぎないと考えることもできる。結婚制度を解体するとはその防波堤を決壊させることであるが、その時にどうなるのか、個人的にはかなり不安な部分がある。

仮に一夫一婦制を解体し完全な自由恋愛にするとインセルの不満は事件ではなく社会問題として議論されるようになり、その時には女性を独占するアルファ雄を殺すことが正しいこと、つまりは社会正義だという意見が民主主義を通じて多数派になっても不思議ではない。殺さないまでも、少なくともアルファ雄を差別し排除しようとする動きは必ず出てくる。そうなれば人殺し・差別・テロが正当化されるという事態になりかねない。そうならないための代替手段としてセクサロイドメタバースでのバーチャルセックスのような方策も考えられるが、やはり代替品は代替品に過ぎず、男性の情念を鎮めるには至らないように思う。

自由とか云々以前に雄は雌をとった雄を殺す。その前提がないと「最悪の結果」を招くのではないか。

そもそも結婚制度を解体するとは何も新しいものではなく共産主義者がよく言うことのひとつであるが、この手の「論理的平等論」は制度を敷くことだけを目的としており、その結果どうなるのかを考えていないものが多いように見える。「何が自由か」ということに焦点をあてすぎると「制度がもたらす結果の残酷さ」を考慮に入れないまま議論が進んでしまう。自由と同等かそれ以上に大事なものは当然ながらある。命はもちろんのこと、穏やかな生活、安心、幸福、孤独ではないなどは自由と同程度には大切なものであるはずだ。

 

そして、結婚制度解体のような話をする人は近代に毒されすぎているように見える。「同性婚や近親婚以前に結婚制度をなくしてすべての人を平等に扱うべきだ」というのはそれだけ取り出すと正しく聞こえるものの、人間という不安定な因子をそこに抽入するだけで一気に瓦解するようなものでしかないのだ。人間という何を考えてるかどうなるかよくわからない集団にたいしては論理解としての正解はないはずで、特に恋愛などの実存に係る結婚制度がなぜ存在しているのかを勘案しなければ恐ろしい事態になりかねない。実際、マルクスも『共産党宣言』にて家族の解体を主張していたが、共産主義を実現しようとした旧ソ連がどうなったかは周知の通りである。共産主義者の反差別論を借りるならば他にも私有財産制度も差別の一種であるため、所得税を限界まで上げることで全国民が平等に資本を享受できるようにすべきである、のような話もできてしまう。もちろんそんなことをすればキャピタルフライト(資本逃避)が起きて国が貧しくなっていくわけであるが。

 

一見差別に見える諸制度が実は社会を回すのに欠かせないものだというのはかなりあることで、結婚制度も同様ではないだろうか。結婚制度には人口再生産という国家的なプロジェクトとは別に雄同士が殺しあわないためという理念が多分に含まれている。それは自由主義者から見れば時に差別に映るし、実際に憲法24条で恋愛を縛っている今の状態は差別といえば差別である。けれど、それが差別であっても温存すべき差別が世の中にはある。結婚制度はその最たるものと言えるだろう。上述したように、結婚制度という差別的措置を撤廃した時には雄同士で殺し合いになるし、女性がアルファ雄とだけ性交渉をするようになれば、満たされない男性が増えテロや性犯罪が増加するようにだってなるだろう。そのような純粋な闘争状態を望むのであれば結婚制度解体を主張するのもやぶさかではないが、「自由だから」「平等だから」という安易な考えで主張するのはやめたほうが良い。相応の報いが待っているはずだからだ。