メロンダウト

メロンについて考えるよ

進撃の巨人が連載終了するけれど進撃の巨人ロスの人にはゲーム・オブ・スローンズをオススメしたい

 ついに進撃の巨人が連載終了するみたいで、大変かなしい気持ちと同時にラストはどうなるのかといった期待がいり混じっている。

進撃の巨人のストーリーはいまさらここで書くまでもないけれど、巨人が攻めてきて人間がそれになんとか抗って奮闘していくと思ったら巨人と人間にはかなり深い物語があってといろんな感情が入り乱れていく点で目が離せないものになっている。

僕が大人になってから連載を必ず毎月読んでいたのは進撃の巨人だけかもしれない。なんにせよ大変面白い作品なのは疑いようがないのだけど、進撃の巨人と同じかそれ以上に面白い類似作品にゲームオブスローンズがある。進撃の巨人ロスになるであろう人にぜひともゲームオブスローンズをおすすめしたい。

進撃の巨人とゲームオブスローンズはかなり似ている部分がある。それを紹介したい。

まずはじめに「壁の存在」である。

進撃の巨人の世界では人類を巨人から守るための3つの壁(シーナ・ローゼ・マリア)がある。壁に守られた世界で主人公のエレンが自由を求めて壁の外に出ようとするのが作品の大きなテーマとなっている。

一方のゲームオブスローンズでは人間とゾンビを隔てる大きな雪の壁がある。壁の北側にはゾンビや幽霊が存在していて、それらの侵攻を防ぐ盾となっている。これだけでも進撃の巨人が好きな人はハマルと思う。その壁をナイツウォッチと呼ばれる人々が守っており、そこでさまざまなドラマが生まれるわけだけどネタバレになるので詳細は省かせてほしい。

人間とそれ以外を隔てる大きな壁という設定にはものすごくワクワクするものがある。僕はゲームオブスローンズよりも進撃の巨人を先に読んでいたのだけれど、最初に読んだ時、大きな壁に囲まれて人類が暮らしているという設定だけで興奮したのを覚えている。

なぜ壁の存在に興奮するのか、その理由を考えるに壁の外側の世界は人間が自然を征服する以前の状態に近いからではないだろうか。いまの人類は食物連鎖の頂点に立っているけれどそれ以前の人間は自然の一要素に過ぎなかった。自然を超克して生活しはじめたのはここ何百年余りのことであるが、それ以前は自然と人間がないまぜになった世界に人類は生きていた。不合理な脅威としての自然と共に生きるのが当たり前の世界で、現実においてのそれは自然だったけれど、進撃の巨人とゲームオブスローンズの世界においてそれはゾンビだったり巨人だったりの理不尽なものに置き換えられて描かれている。それも今を生きる我々と同時期にそこにある。

つまり壁の中の人類が今の我々(文明後の人類)であり、壁の外が過去(文明以前)として対比されているのが両作品の大きな魅力になっている。今の我々が過去にたちむかいながら未来を勝ち取っていく。この作品の構造はとても斬新だ。

一言で言えば「近代文明の再構築」が大きなテーマなのだ。そりゃ面白いよなと。さらに言えば、今(文明後の世界)と過去(文明以前の世界)が同じ世界に存在しているところが大きなポイントになっている。進撃の巨人の世界では壁の中で人類が暮らしており、何百年も壁がやぶられることはなく、巨人の存在もほとんど忘れかけているほど平和な世界であった。それはいま僕達が生きている世界とまったく同じである。壁の中で何百年と平和に暮らしている人々の心境と今の我々の暮らしはまさに同じだけれど、違いは壁の外に文明以前の世界が存在しているところにある。現実の僕達は今を生きるしかなく過去を体験することはできない。しかし進撃の巨人の世界では今の外に過去があるのだ。タイムリープがある作品では今の人物が過去に行くことが描かれることはあっても過去の世界がそのまま今にやってくるといった構造はなかった。さらにさらに進撃の巨人の面白い点が「今だと思っていた我々が実は過去だった」点にもある。その大転換が描かれているのがアニメ三期以降になっている。過去のそのまた過去ではエルディア人(壁の中の人類)のほうが世界を意のままにするほどの原始的な暴力を所持していた。そうやって今と過去が転換していく。

それが進撃の巨人の面白さなのだと思っている。その世界線を生む大役を担っているのが壁の存在なのでしょう。

 

また、本来は抽象的なものである自然=過去を実存的な存在としてあらわすのに巨人やゾンビを用いている。なので駆逐すべき対象としてよりクリアに見える。それはエレンの母親が巨人に食べられるシーンがそうだったりするけれど、自然というコントロール不可能で人間のちからでは抗えない存在=自然を巨人に置き換えることでより明確に克服すべき対象として認識しているのだ。

ゲームオブスローンズの世界にも同様の構造を見ることができる。壁の北側にいるゾンビがそうである。ゾンビという死者はまさに死を象徴する存在で克服不可能なもの=自然=死という図式となっている。壁が生死そのものを隔てるものとして存在しているのだ。そしてその壁が・・・と書きたいところだけれどやめておきます。ゾンビと壁と人類がどう関係していくのかは巨大なネタバレになってしまうのでここでは伏せさせてもらいたい。すすめといてネタバレしてたらめちゃくちゃだしね。

とにもかくにも巨大な壁の存在は無力な人間が世界を開拓していくという近代の再構築を想起させる点でとても面白い設定となっている。そして物語の中でその壁に意味が乗っかっていくところも両作品ともにある。見ていない人はぜひその物語を見てもらいたい。特にゲームオブスローンズは日本で見てる人があまりいないうえにものすごく面白いので強くおすすめしたい。と、いつも政治の話などしているこのブログで書いてもしょうがない気もするけど(笑

とはいえいつも書いている政治が両作品の主題でもある。

 

2つめにある共通点が「政治」の面白さだと感じている。

 進撃の巨人ではエルディア人とマーレ人、そして壁内人類と壁外人類の関係が描かれている。

ゲーム・オブ・スローンズでは鉄の玉座と呼ばれる世界の王を決するため7つの国の領主による覇権争いが繰り広げられる。

両作品ともに国ごとの利害関係、策略や陰謀などによって個人がふりまわされていくのが大きなテーマでもある。愚かな為政者や世界の構造によって個人の人生が決定してしまう。進撃の巨人ではマーレ軍の戦士となるライナーが代表的な政治の犠牲者として描かれている。幼少期に反エルディア思想を植え付けられたライナーは世界を救うためという大義のもとに巨大な罪をおかし、その罪に苦しめられることになる。他のキャラクターも同様に政治や世界に巻き込まれていく点で政治の残酷さと人間の弱さをあぶり出している。その不条理さによって興味深い作品となっている。その人間の弱さを代表するものが以下ケニーのセリフだった

「今なら奴のやったこと わかる気がする

 俺が見てきた奴ら みんなそうだった

 酒だったり 女だったり 神様だったりもする

 一族 王様 夢 子供 力

 みんな何かに酔っ払ってねぇと やってらんなかったんだな

 みんな何かの奴隷だった あいつでさえも」

 

 

個人の強さで言えば最強クラスのケニーでさえ弱い人間だった。ケニーが「あいつ」と呼んでいるのは壁内の前王様だけれど王様でさえ奴隷だったとケニーは言う。政治や世界の残酷さの前には人間個人なんてどうしようもなく弱い存在なのだと。このような思想は作品を通して一貫しているテーマであるように思える。

 政治という暴力、世界という理不尽、その中であがく弱い人間。政治を描いた作品は他にもたくさんあるけれどこれほどまで「端的」に描ききる筆致のすごさは進撃の巨人ぐらいのものではないだろうか。

一方のゲーム・オブ・スローンズにおいて政治はどのように描かれているかといえば血筋であったり義理であったりといった部分をベースにしながらも、人間関係を焦点にして政治が描かれている。つまり外交戦略が大きなテーマとなっているのだ。ゲーム・オブ・スローンズの世界ではかなり多くのキャラクターが出てくるのだけど、キャラクター同士のコミュニケーションがそのまま政治的な足がかりとなる場面が数多くでてくる。進撃の巨人のように政治そのものの暴力性を描くのではなく、ゲーム・オブ・スローンズでは政治戦略のリアリティーと呼ぶのがてきとうかどうかわからないけれど、徹底して「政治における人間関係」に焦点が置かれている。

なので誰と誰に貸しがあって、誰と誰がどんな場面で一緒にいて、どんな歴史があるのか、どう関係していくのか。そういった個人と個人の関係性を焦点に見ていくと大変おもしろい。その関係性があったからこそ、こういう政治的な決定につながっていくのかというふうに面白さが後からくるようになっている。それは漫画における伏線ともまた違うもので、その関係性がなければこういう展開にならないよなといった物語の蓋然性に接続していく構造になっている。それがゲーム・オブ・スローンズの最も面白いところであったりする。最初見始めた時にはこの人誰だっけとか、7つも王国があるものだから話があっちこっち飛んだりしてしまい、見るのを途中でやめてしまう人もいる。それが日本でゲーム・オブ・スローンズが敬遠される理由でもあるのだけど、そういう関係性を逐次覚えながら視聴するとあとで面白さがドカンとくるようになっている。なのでシーズン3まで見たら止まらなくなる。

一般に海外ドラマはシーズンがすすむごとにだれてきてしまいがちだけれどゲーム・オブ・スローンズはその逆でシーズンが進むほどに面白くなっていく。

放映自体は終了してしまったけれどサブスクなどの配信サービス(アマゾンとhuluかな。ネットフリックスは見れなかった)で見れるので進撃の巨人ファンでゲーム・オブ・スローンズを見てないよという方がいたら見てみると良いかもしれません。

ちょうどコロナで暇だしね。